【教育コラム】2,非認知能力 ますます大事

読売新聞(三重版・愛知版)掲載「伊藤奈緒の受験ABC」2021年6月3日

 知識を活用する能力、いわゆる学力を「認知能力」と言いますが、前回はその核心にあたる母国語リテラシーについてお話ししました。ですが受験で高いパォーマンスを発揮するには、テストで数値化が可能な「認知能力」だけでなく、最近何かと話題の「非認知能力」も必要なのです。

 非認知能力とは、メタ認知、忍耐力、最後までやり切る力といった数値化するのが難しい人間の持つ底力を言います。たとえば決まった事をルーチンとして処理すればよい平常時では、この能力はあまり注目されません。しかしプレッシャーのかかる入試本番など非常時に向き合うときには、この非認知能力が成否を分けます。しかし、どうしたらそれを鍛えられるのでしょうか?
 たとえば結果が厳しく問われるスポーツや芸術、ビジネスの領域においては、いかに勝利するか、いかに成果をあげるかと、目標に徹底的に拘り努力し続けることで、スキルの鍛錬と精神の涵養が相乗する事例を目の当たりにすることがよくあります。人間は高い目標にチャレンジし、その過程で困難に直面すると、自分の持てる能力全てを総動員して難局をブレイクスルーしようとするからでしょう。受験も同様で、高い目標を揚げ困難に挑み続けることで、認知能力と相乗して、非認知能力も鍛えられていくのです。

 これからの社会は平生が非常時の時代です。そんな時代を生き抜くには。危難の中に道を見出すため粘り強く愚直に物事に取り組む力が必要ですが、これこそ認知能力と非認知能力そのものであり、有事の時代を生き抜くためのマスター・スキルなのです。私たちが真剣に受験指導に取り組むのは、子供たちに受験を通して人生のマスター・スキルを身に付けさせることができると確信しているからです。