【教育コラム】3,英語学ぶ意義 考えて

読売新聞(三重版・愛知版)掲載「伊藤奈緒の受験ABC」2021年7月1日

 大学入学共通テストが今年からスタートしましたが、もともとはその目玉であったはずの英語民間試験の導入が、二転三転したあげく断念されるらしいことが先日報道されました。一方、中学校では今年度から新学習指導要領が実施され、高校内容が前倒しで導入されるなど、学習難度は確実に増しています。日本の英語教育が迷走するなか、私たちが英語を学ぶ意義について改めて考えてみたいと思います。
 4月の第1回でもお話ししたとおり、英語力の根幹には国語力があります。母国語のリテラシーが低いまま英語を勉強しても、ロジカルな文章を読解したり聞き取ったりすることはできません。まして書いたり議論したりはなおさらです。


 これが顕著に表れているのが難関大学の入試問題です。英文和訳では、難解な英文を読み取れているかどうかは日本語で判断されますし、和文英訳では、与えられた日本語文に含まれるロジックを正確に把握することが英訳の大前提です。
 そもそも、どのレベルの英語力を目指すのかという問題があります。インバウンドで日本に来る海外の方に案内ができる日常会話レベルであれば、今やかなり高性能化しているAI(人工知能)の自動翻訳アプリで十分です。一方、難関大学の例のように、高度な学術論文を読んだり書いたりできるレベルを目指すなら、英語力はもちろん、そのベースとなる母国語リテラシーを育成する必要があります。


 英語ができるに越したことはありませんが、AIが進化するなか、どんなレベルを目指すのかを曖昧にしたまま漠然と英語教育を重んじる姿勢には疑問を感じます。大学で学び、日本の未来を担うリーダーになろうとするならば、まず知識習得と思考の根幹となる国語力の育成に力を入れることが重要です。結果的にそれが英語力向上につながるのです。