【教育コラム】9,国語重視の傾向 鮮明

読売新聞(三重版・愛知版)掲載「伊藤奈緒の受験ABC」2022年2月3日

 2022年度大学入学共通テスト(以下、共通テスト)は、7科目で平均点が過去最低となっています。主な理由は、ほとんどの教科・科目において、問題の総文字数・単語数が増加したことにより、高度な情報処理能力、つまり短時間で膨大な情報を早く正確に読み取る論理的思考力・読解力が求められたことで、難易度が上がったからです。

 しかし、これは当初から予想していたことで、実際私は、2016年に文部科学省から共通テストの方向性について公表された資料からその趣旨を読み解き、これまでの機会あるごとに、自塾の生徒や保護者の皆様を中心に広く訴えてきました。先日、文科相が「共通テストが意図する能力を問う点がより明確になっている」との見解を示したように、今年いよいよ、その本性が露わになったに過ぎません。

 私は教育でもっと世の中に貢献できないかという思いから、本業の傍ら、地元の国立大学の大学院で科学的な研究も重ねています。テーマは、国語と他教科および全体学力との成績の相関関係です。少しその内容に触れると、過去のセンター試験と共通テストを比較すると、国語力の重要性が増していて、共通テストはかつてに比べて国語という教科が得意な人が有利になっている———。そういう事実を、エビデンス(根拠)によって初めて裏付けることができたのです。

 そもそも私たちの学ぶすべての教科・科目は、教科書や参考書を読むにしろ、授業を受けるにしろ、高度な日本語を読み書きすることで成り立っています。例えば、数学の参考書を読むことは、数理記号の取り扱いを説明する難しい日本語を読み解く行為に他なりません。国語は、全ての教科・科目の基礎なのです。だから、私たちは国語という教科の重要性を再認識して勉強していく必要がありますね。