【教育コラム】6,「知的謙虚さ」忘れずに

読売新聞(三重版・愛知版)掲載「伊藤奈緒の受験ABC」2021年10月7日

 eisu高校部では、大学受験を有利に進めるため、新学年カリキュラム開始を毎年秋に設定しております。それに合わせ例年9月中下旬から約2か月間、教育・指導方針について私から直接生徒・保護者様にご説明差し上げるため、リアル対面式の進学説明会を実施しています。

 しかし今年は、新型コロナウイルス感染症拡大状況をかんがみ、断腸の思いで50回に及ぶすべての会をウェブライブ配信のみでの実施としました。なぜなら大学受験指導21年、IT・オンライン教育16年の私の経験値から言うと、情報・知識の共有や習得ならオンラインで十分でも、やはり感情・意欲の共有や喚起となると、生きたリアルな集まりの中で行う方が絶対に有効だからです。よってアナログ人間代表の私としては、今年のやり方は不本意だというのが正直な感覚でした。

 しかしその結果は・・・・・今のところ、従来と比べて断然良い反応をいただいています!

 正確な情報・知識がしっかり共有されて初めて感情・意欲の共有も確かなものになると実感させられました。リアルで対面しないと伝わらないというのは、私の思い込みだったようです。

 以前、地方国立大学医学部の教授の方々に、受験生を面接するうえで何を重視するかと尋ねたことがありますが、そのとき挙げられたのが「知的謙虚さ」です。知識・情報・スキルを絶えずアップデートしなくてはいけない人生100年時代では、知的謙虚さ——謙虚に学ぶ資質は、その人の伸びしろ・可能性そのものだとおっしゃっていました。医学では「こんなの知ってる」「自分はすごい」といった思い込みやうぬぼれは取り返しのつかないミスにつながるとも。

 私自身、生徒や保護者様から教えていただくことも多いですが、そんな方々は皆確かに謙虚です。私も知的謙虚さを忘れずに成長していきたいと思います。